4つのミス、およびその正解率について(ネタバレ)

 
 シナリオ担当の小野堂です。
 私の方からも、4つのミス、およびその正解率について話したいと思います。
 以下、ネタバレを含みますので、解答編をプレイした方のみご覧ください。
 
 
【1】 「1つ目:懐中電灯」のミスについて
 
 本来あるべきものがない──というミステリに時々登場する問題です。
 今回は、「懐中電灯」。
 雨が降る夜に外に出たにもかかわらず、被害者はあかりになるものを持っていない、という状況のミスです。
 作中で、芦国と小此木が何度も懐中電灯について話しています。
 ヒントとなる情報が多かったと思いますが、正解率は94%。
 「懐中電灯に関しては矛盾がない」と芦国が強く思いこんでいたために、つられてしまった方が多かったのでは、と推測しています。
 
 
【2】 「2つ目:湖岸の足跡」のミスについて。
 
 テストプレイをお願いした時に、「簡単過ぎるミスではないか」と指摘されたものです。事実、正解率が96%にも達しています。
 その一方で、ここから派生した「順番の矛盾」に関しては、少しお茶を濁す対応になってしまいました。すみません。これはルールを上手く記載できなかった私たちの手落ちです。
 次回からは、「いくら派生のミスを書いても、まとめて一つのミスとカウントする」、とルールに明記しようと考えています。
 
 
【3】 「3つ目:ガソリン」のミスについて。
 
 このミスについては、いろいろな方からつっこまれました(笑)
 一言でまとめると、「ガソリンのミスは状況証拠に過ぎず、読者への挑戦問題としては弱すぎるんじゃないか──」というご指摘です。
 
 ですが、これについては、「ミス探し」ならではの問題だと思っていただければ幸いです。
 「ミス探し」はあくまで「犯人のミス」を挙げるものです。
 「犯人当て」ではありませんから、「犯人証明」をする必要がありません。
 以下、例を挙げます。
 
 1.▲▲は、毎朝8時に花壇に水をやる。
 2.だが、殺人が起きた日だけ、▲▲は花に水をやらなかった。
 
 これが「犯人当て」なら、この情報は重要ではありません。
 花壇に水をやらなかったとしても、犯人につながる証拠にはなりません。
 アリバイがなくて怪しい、というのが関の山です。
 
 ところが、「ミス探し」ならどうでしょうか。
 
 1.▲▲は、毎朝8時に花壇に水をやる。
 2.▲▲は殺人を犯したおかげで、その日は花に水をやれなかった。
 
 これは、「ミス探し」における「ミス」になると思います。
 
 たとえば……ですが、「倒叙ミステリもの」における大先輩──コロンボ警部がここの状況を見たらこんな感じになると思います。
「あのお……。すみません。もうひとつだけよろしいでしょうか。あ、いえ、たいしたことはないんですが、どうも引っかかっちゃって……。毎日花壇に水をあげている──、あなた、そう言いました。でもさっき案内してもらったとき、花、しおれてました。水をやった形跡がない。ほら、見てください。土、からっからに乾いてます……」
 
 たとえば……ですが、古畑警部補がこの状況を見たらこんな感じになると思います。
「──あっれぇぇぇ。だとしたら、おかしくありませんか。私、さっき、聞きましたよね。毎朝8時に花壇に水をやるのが日課だと。だけど、見てください。花──、全部しおれてます。水をあげた形跡──、ありません」
 
 たとえば……ですが、小此木鶯太郎が来たらこんな感じになると思います。
「あ、これですか。じょうろです。え? 何に使うのか、ですって。……あー、えーっと……。そこで一つおたずねしたいのですが、▲▲さん、今朝どこかに出かけませんでしたか? と、いうのもですね……、見てください。花が全部しおれているんです。▲▲さん、忘れてどこかにいってたんじゃないかって、そう思ったんです」
 
 以上のように、「犯人当て」と「ミス探し」における情報の価値は違います。
 
 「ガソリン」のミスについても同じです。
 
 1.芦国は、湖の汚れを徹底的に嫌っている。
 2.にもかかわらず、目の前のガソリンを無視して行動している。
 
 このような状況に遭遇すれば、相手に疑いをかけるのは自然だと思います。
 
 今回、特殊な形式を採用してしまったために混乱させてしまったかもしれませんが、「ミス探し」ならではの問題だと考えていただければ幸いです。
 正解率は89%でした。
 
 
 
【4】 「4つめ:桟橋への案内」のミスについて。
 
 私が難易度のついての日記で、「あのミス」と言っていたミスがこれです。
 「犯人視点のミステリ」という特殊な形式を採用することで、「犯人の知っている情報」=「読者の知っている情報」となり、「犯人の盲点」=「読者にとっても盲点」という特殊な問題になりました。
 『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』をごらんになっていた人は、この種のトラップをご存じだと思いますが、やってみると意外に気づかないものです。
  事実、86%と他の問題より正解率が低くなりました。